その中でもトイレットペーパーなどの紙製品の買占めや、マスクの効果の賛否など、フェイクニュースが実害をもたらす事の恐ろしさについてこれ程実感した年もないでしょう。
そういう訳でフェイクニュースがどうして発生するのかという疑問について解説された本書を読んでみました。
「フェイクニュースを科学する」
本書はフェイクニュースとは一体どういう現象なのかという定義から始まる。
フェイクニュースと一口に言っても、誤った情報の拡散から悪意のある捏造まで成立過程には種類があり、7種類の定義を元に解説していく。
それらを通念的な概念ではなく、計算社会科学の研究結果を取り上げ定量的な特徴を解き明かしていくのがポイント。
フェイクニュースに騙される人が多発してしまう理由として認知バイアスとエコーチェンバーについて章を割いて解説している。
認知バイアスとは見たいものだけを見る心理。
エコーチェンバーは趣味趣向の偏りやすいネット環境により情報の取得の偏りが生じてしまう環境の事。
またそう言った環境を誘発する情報過多社会についても解説がある。
情報は無限に生まれ続けており、1人の人生では限られた情報にしかアクセスする事が出来ない。
私たちの認知出来る情報は有限だ。
アテンションエコノミーという言葉がある。
情報過多社会においては人間の認知的資源が希少価値である。
限られた私たちの認知的資源を奪う事こそがビジネスに繋がるという訳だ。
SNSの通知やメールの着信など現代社会では通知が鳴り止まない。
私たちは慢性的な注意力(アテンション)を失っている。わかりやすく言い換えれば1つのことに集中する時間を失っているとも言える。
このアテンションエコノミーがより人の認知バイアスを深くしてしまう。
ではどうすればいいか。
ニュースとジャーナリズムの博物館「ニュージアム」が提唱するメディアリテラシーの教材にESCAPEというスローガンがある。
エビデンス(証拠)その事実は確かか?
ソース(情報源)誰が作ったか?
コンテキスト(文脈)全体像はどうか?
オーディエンス(読者)誰向けか?
パーパス(目的)なぜ作られたか?
エクセキューション(完成度)どう提示されたか?
フェイクニュースという自体新しい概念で、対策もまだまだ発展途上だが、今後なくなるものではないだろう(というかもっと増えるだろう)
どう付き合っていくかは最終的には個々人のメディアリテラシーに依存する。
概念を理解して事実関係を丁寧に確認していく事が我々に出来る唯一のことだろう。
闇雲に疑うだけでもダメで正しく疑うためにはデータに基づいた理解が重要だ。
そう言った意味で本書は丁寧にフェイクニュースの背後関係を体系的におさらい出来る。今後メディアに踊らされないための道しるべとしておすすめの一冊だ。
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