もともと読書や文章の書き方についてはいくつか読みたいと思っていた。そこでこの本をお勧めしている方がいたので読んでみた次第だ。
前半は準備編からスタートして、後半の実践へと至る構成になっている。
準備編は、心構え、習慣化、道具の揃え方、知人の作り方など。
正直準備編は合わなかった。
それぞれは至って当たり前のことを最もらしく書いてある。
知的生産術のヒントを過去の偉人・著名人から得ようというコンセプトのためエピソードの引用が頻繁にある。
加えて形口が大仰と言うか大上段からくるので回りくどく、結論がどこにあるかが分かりにくくて読みにくかった。
梅棹氏の文体は読みやすかったので同じ分野でもやはり相性はあるのだなと感じた。
実践編は論文の書き方、本の読み方など具体的な方面について。こちらは著者独自の見解や経験則が増える。準備編に比べるとある程度読みやすく具体性も増す。
特に蒐集術、情報の調べ方、分析については勉強になる内容だった。
蒐集術の項目は特に興味深かった。蒐集するなら体系が完成するまで全部がなければ意味がない。なんとなく幅広い家電のカタログを集めるよりも、電気シェーバーに絞り全てのカタログを集めている方が専門家として価値があるという事だ。
確かに説得力があるし、これは知識の体系についても全く同じことが言えそうだ。知識も深く絞って選択している方が価値が出るように思う。
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だが読みたかった読書法・執筆法に関しては読みにくい割には、そこまで新鮮な情報は感じられなかったため途中で読むのを断念した。
面白いのは併読中の佐藤優著「読書の技法」と多くの内容に被りがあったこと。特にレーニンが取ったヘーゲルについてのノートがどちらも登場していて興味深い。比較したところ読書法に関しては読書の技法が圧倒的に読みやすく、手法も取り入れやすい。読書法を学びたい方はこちらがおすすめだ。後日記事にもする予定。
本書は要約すると、読書や執筆活動などを通して知性を深めたいと考えた時にプランを立てるためのロードマップのような本だ。
スタイルとしてはコツやポイントというよりも「あれもこれも」的な網羅性であるので自分に合いそうな部分だけを取り入れていけばいいだろう。若者向けとあるが、読書初心者がこの内容を徹底しようとしても全部を拾うのは流石に無理がある(時代性的にも)。
どっぷりと研究に骨を埋める立場の人なら一度は読んでみてもいいだろうが、思想的な方向性が強いのでビジネスマンが実践的に取り入れるには荷が重すぎると感じた。
もちろん相性が合えば、この本の方向性を指標とするだけの重みは感じさせる内容ではある。
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