「楽しく読む」ことに主眼が置かれた読書術
アウトプット大全は努力さえすれば誰でも出来る当たり前のアウトプットを作業ベースまで噛み砕いて懇切丁寧に提案する本である。対して、こちらは読むことと読む事を楽しむ事が主眼に置かれている。あくまでアウトプットは手段であり本を読む楽しさを伝える事を重視しているようだ。
特に顕著なのが名著の引用の数々。
この本の最も素敵なところが沢山の古典・名著が引用と共にふんだんに紹介されているところだ。しかもその紹介が上手くて読みたいと思わせるものが多い。
大枠としてはアウトプット大全と近く、話す・伝える・書くという事をベースに書かれており共通する部分も多い。
だが大きく違っているのは楽しく読む為のノウハウが惜しみなく紹介されているところだ。
本屋で読む・カフェで読むなど効果的にモチベーションを維持できる読み方に始まり、
ジャンル別に
- 人物伝、
- ビジネス書、
- 小説、
- 古典、
- ノンフィクションなど、
ジャンル別に得られる効果やスキルを「読み方」として紹介している。
引用の数々が興味を引くものばかりで、著者は本当に沢山の本を読んできたのだなという知性と教養を感じさせ、読書術に対する強い説得力がある。特に古典の数々は存在は知っているが紹介の仕方が上手く、一度読んでみようかと思わせる様な書き方が非常に多い。
この文章の知性と満足度を高める引用テクニックに関してはp82「本の情報をSNSに書く」の項目で解説されている。ここが最も参考になった項目だ。
言われてみれば面白いとされるネット上の文章、特にブログでは、単純な内容の日記であっても連想ゲームのような引用で知性を感じさせつつ興味を惹く文章が多い。私も知的な興味を惹けるような文章を書けるように是非取り入れていきたいところだ。
p86「引用で文章を作成する」の項目も面白い。
いい論文を書こうと気負うあまり、資料集めに奔走し、1年かけて一文字も進まなかったというのは笑い話の様で耳が痛い人も少なくないだろう。そこで著者が編み出した手法が、とりあえず引用のフォーマットだけを埋めていく、というのは経験から来る貴重なノウハウだ。とりあえず埋められそうな箇所から手を動かす。そしてモチベーションを高める、というのは仕事やブログ作成など様々なことに応用できる様に思う。
おまけ:読書術で共通する鉄板項目
ところで何冊か読書術的な本を読んできたが本物の多読家はほぼ共通した読み方を提案している事が見えてきた。
複数名に共通する項目はほぼマストで取り入れていいのではないかと思う。
具体的には以下の内容。重要そうな順に書いていこう。
- 目次に時間を掛ける
- はじめから読まなくていい
- 全部読まなくていい
- 読みたいところから読めばいい
- 読みたいときにすぐ読む
- 付箋や線を引きながら読む
- すぐにアウトプットする
- 1テーマで3〜5冊読む(面白いことに数も大体一致している)
このあたりはほどんど鉄板だ。
既にある読書術を参考にしていった結果、共通項が増えるという可能性も無くはない。だが、私も乱読を進めるうちに大体同じような傾向になってきている。おそらくこれは、最適化の結果の収束だと思われる。
特に重要なのは上から3つだろう。
まずは読まないよりは1ページでも読んだ方がマシ、の精神ではじめからちゃんと全部を読もうと思わない事だ。
その上で限られたエネルギーをはじめの数ページに割かず、文章に入る前の目次で構造を俯瞰することに務めるのだ。大まかな構造が分かったら興味の惹くところだけをピックアップして飛ばし飛ばしでザッと読む。
そのまま短時間で巻末まで一気に進み、なんとなく読みきった気になる。これが肝要だ。時間の目安は幅があったが、長くても大体30分以内が多かった。興味には賞味期限があるという主張も悉く共通する。
その際、気になったところにはどんどん付箋や線を引きながらメモを残していく。そういう意味では紙ベースが理想なのも共通しがちな主張だ。
そうして自分なりの要約を作ってしまえば高確率で忘れにくくなる。
また1テーマで最低3冊は読むべきという主張もよく聞く内容だ。面白い事に最低3冊という数も同じ事が多い。比較に客観性が出るのが3冊からという事なんだろう。これは非常に重要で、未知の分野の場合、その分野が難しいのかその本自体が読みにくいのかも判断がつきづらい事が多い。複数の本があれば読みづらいと思った時点で他の本にザッピングしてみるとこっちは読みやすいぞ、なんて事がよくあるのでまずは1冊、ではなくまずは3冊用意するのがオススメだ。共通した主張があれば信頼度の補強になるし、不一致があれば信頼できない著者のあぶり出しにも役立つ。この際、偶数ではなく奇数冊用意しておくのが意外に重要だ。2冊ではどちらが正しいか判断できないからだ。4冊で半々に割れた時も判断に困る。
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