都市計画の入門を学んだので、じゃあ実際にうまくいっている街ってどんな街なんだ?どう住みやすいんだ?という事を知りたくなったので試しに何冊か読んでみた。
本書は世界の都市計画のうち、コンパクトシティ化のヒントとなりそうな事例を集めたもの。
コンパクトシティとは何なのかというと実際明確な定義は無いようだが、平たくいってしまえば自動車に依存しないために公共機関に依存たまちづくりを進めつつ、郊外にスプロースを生み出さないように都市機能をコンパクトにまとめる開発を進めること。
スプロースとは無計画な開発により、田園の間に店が建ったり、一部分だけ住宅地帯が発生したり機能がちぐはぐな状態で郊外の都市開発が進んでしまう事。虫食いにたとえてスプロースと呼ばれている。これの何が問題かというと機能が分散するため車依存型の社会になってしまう事や、各種インフラにかかるコストが機能を集約させた都市に比べて増大してしまう事が挙げられる。
つまりコンパクトシティとは、公共交通機関の利用を促し、無計画な郊外への開発を抑制する方向で開発された都市だ。
日本でも高齢化社会に向けて公共交通機関へシフトした社会や、社会的コストを減少させるためにもスプロースの抑制を意識した開発が必要だと言われている。
海外の事例からコンパクトシティのヒントを学ぶための事例集が本書というわけだ。
オランダ・アムステルダムやフランス・ストラスブールなど7つの都市の事例が簡潔にまとめられているが、中でも興味深かったのはデンマークのコペンハーゲン。
コペンハーゲンは2016年の国連・幸福度調査において世界一位の結果を出している。他の要因がある事を差し引いても、都市機能がうまくいっていなければこの結果はまずないだろう。
そんなデンマークの都市計画は、この手のジャンルの本では必ずでてくるフィンガープランが提唱された都市だ。フィンガープランとは手のひらの掌底部分を中心地になぞらえ、そこから鉄道沿いに枝状に開発されていく形状を、手のひらと指に見立てた計画の概要だ。
フィンガープランは時代とともに改定され続けコペンハーゲンを中心とした開発が続いていくが、根底に流れるのはユーザーデモクラシーという概念。話し合いと相互理解、そして他者への尊重を重んじる。
市民が自主的に参画する意識も強く、それを象徴するのがテナントデモクラシーと呼ばれる住宅の運用システム。デンマークの住宅はなんと20%が非営利団体によって運営されている。良質で低価格な住宅が約6万戸、このテナントデモクラシーという独自の仕組みで運営されている。
また心地よい空間で過ごす身近な人とのゆっくりした時間を重要視する「ヒュッゲ」という価値観も興味深い。
都市空間にこの価値観が反映されており、自宅に延長のように「まちにでてリラックスして過ごせる」空間づくりが進められている。人々が出会い、立ち止まり、お喋りする。そんな空間を目指して公園や広場、ショッピングストリートの再整備が進められている。
ベンチでは何をするでもなく、のんびり休んだりする人々に姿がコペンハーゲンらしい風物詩となっているのだ。
確かにこう聞くと幸せな街ランキングも納得だ。
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